映画(ほか)覚書

映画ほか見たものについての覚書

アメリカ映画

『紳士は金髪〈ブロンド〉がお好き』(1953/アメリカ/ハワード・ホークス)

映像の作成がごく簡易化された現在以降にあっては、基本的にステージ上で演じられる演劇や音楽や、あるいはミュージカルやオペラ、それらの記録としての映像作品は数多制作され、残存していくことになるだろうが、それでも映画はともあれ映画として、何はと…

『ワーロック』(1959/アメリカ/エドワード・ドミトリク)

冒頭、馬上の悪党達が向かうワーロックの町の、砂地の辻が映し出されると、そこに一台の馬車が進む姿が見える。見れば荷台の大きな樽の後部から幾筋もの噴水を散らしているそれは、散水馬車、というらしい。 現在でも普通に見られる散水車と同じ用途の馬車バ…

『ミッドウェイ』(2019/アメリカ、中国/ローランド・エメリッヒ)

漠然と、曖昧に揺らぐ襞状の濃淡が、やがて葦の群生のクローズアップとして画面の中で判然と露わになってくる。そしてその向こうで雁を捕ろうとする網が動いている。 これだけで故なく「映画」だと感じられる。なに故かは本当によくわからないが、確かに。 …

メモ:『星屑の町』「心の傷を癒すということ」『37セカンズ』『響 -HIBIKI-』「女川 いのちの坂道」「盲亀浮木~人生に起こる小さな奇跡~」 「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」

『星屑の町』(2020/日本/杉山泰一) あるいは贔屓目なのかも知れないが、ならば見る者を贔屓目にさせる一際な何かがあるのだと、この映画の活けるのんさんを見ていても言いたくなる。演出なり演技なりの狭間からときとして表出する御愛敬。野暮ったい田舎…

メモ:『犯罪都市』『ブラッディ・ガン』『台北ストーリー』『ロビンフッドの冒険』『わたしは光をにぎっている』『AKIRA』『スケアリーストーリーズ 怖い本』

『犯罪都市』(2017/韓国/カン・ユンソン) 「犯罪都市」ソウル、その混沌としたローカルな地域性がどこまで現実に根差すものかは判らねど、活劇の舞台となるにはこんな国際化と地域性の鬩ぎ合う社会的背景は欠くべからざるものなのかも知れず。1stショッ…

メモ:『風立ちぬ』『ペギー・スーの結婚』「八つ墓村」『レイジング・ブル』「風雲児たち~蘭学革命篇~」『触手』『武士の家計簿』

『風立ちぬ』(2013/日本/宮崎駿) 可塑性。 生きとし生けるものの一部としての機械の機体、起きて見る夢と寝て見る夢、溶け合い繋がり合う線と線、イメージとイメージ、意味と意味との只中で、ただ生きる、生きているという、その単純なリアルの「美しさ…

『運び屋』(2018/アメリカ/116分)クリント・イーストウッド

「運び屋」の自覚を帯び始めた老人が、しかしふと「仕事」の道すがらに路肩で立往生している黒人家族の車に行き会う。タイヤがパンクしたという黒人の若夫婦に気軽に声をかけて助力を申し出る老人は、その口からふと「ニグロ」という差別的な古い言葉を漏ら…

『A GHOST STORY  ア・ゴースト・ストーリー』(2017/アメリカ/92分)デヴィッド・ロウリー

愛する男を喪った女が、キッチンでひとり座りこみ、食器いれに寄りかかって延々とパイを食べ続ける場面がある。延々と食べ続けるその行為は、無論一種の自棄食いというもので、一見すれば延々と食べ続ける様子を延々と捉え続けるかのようなその場面は、そこ…

『マリアンヌ』(2016/アメリカ/124分)ロバート・ゼメキス

遠くに臨む太陽を焦点に、キャメラの視点が眼下の砂漠へと「落下」しつつあることが、画面の前を上へ上へと過っていく雲のような薄い霧状の気体によって判然とする。落下していくキャメラは、そのまま画面の上から降りてくる人の足から体、そして落下傘に吊…